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基礎

サーモグラフィーとは — 熱を見るということ

サーモグラフィーは、物が反射した光ではなく、温かいこと自体によって出している赤外線を見る技術です。照明はまったく要りません。そして暗視とは別物です。

更新

サーモグラフィーとは、熱を見ることです。 物に当たって跳ね返った可視光ではなく、その物が温度を持っているというだけの理由で出している長波長の赤外線を捉えます。ランプもフラッシュも月明かりも要りません。被写体そのものが光源だからです。

この一点から、得意なことも、まるで役に立たないことも、値段の理由もほとんど説明がつきます。

反射する光と、自分で出す光

目も普通のカメラも、反射した光で成り立っています。照明を消せば景色は消えます。跳ね返るものがなくなるからです。

一方で、絶対零度より温かいものはすべて自分で放射しています。温かいほど放射は強くなり、波長は短くなります。5,800Kの恒星は可視光で最大になるので、目に見えます。310Kの人間は約9.5マイクロメートルで最大になります。これは赤外線の奥で、あなたにもスマホにも見えません。

サーモグラフィーは、その帯域(おおむね8〜14マイクロメートル)のために作られたセンサーです。真っ暗な部屋に向けても部屋はそこにあります。すべてが自分の熱で描かれます。

実際にどう見えるか

写真とは違います。熱画像は温度の数値が並んだ格子を疑似カラーで塗ったもの、つまり絵ではなく凡例です。選んだパレット次第で、温かい所は明るく、あるいはオレンジに、冷たい所は暗く、あるいは青く出ます。

解像度は写真の基準では低く、手持ち機で160×120か320×240が普通です。スマホの4,800万画素と比べれば一目瞭然でしょう。温かい何かがあることはすぐに分かります。それが何なのかは、たいてい分かりません。

コントラストは照明ではなく温度差で決まります。冷え込んだ夜の野原に立つ人は見逃しようがありません。地面が肌の温度まで暖まった夏の午後には、同じ人がほとんど消えます。

サーモグラフィーは暗視ではない

いちばん多い混同で、しかも二つは正反対の条件で役に立たなくなります。

  • 暗視は、すでにある可視光と近赤外線をわずかでも増幅します。顔、標識、地形といった「見分けられる景色」が得られますが、多少の光が必要で、完全な暗闇と濃い霧や煙には歯が立ちません。
  • サーモグラフィーは放射された熱を捉えます。完全な暗闇でも働き、煙・粉塵・薄い霧を通します。しかし標識は読めず、顔は判別できず、窓越しには見えません。

どこで本当に役に立つか

  • 建物。 断熱の欠損、窓枠まわりのすきま風、壁内部の湿気、床暖房の経路。これは他の道具では代わりが利きません。
  • 電気設備。 緩んだ端子は故障するずっと前から発熱します。分電盤をひと通り見るだけで、明日の事故が今日見つかります。
  • 機械。 ベアリング、ブレーキ、過負荷のモーター、詰まったラジエーター。
  • 捜索と野生動物。 冷たい地面に対する温かい体は、どの技術でもいちばん明瞭な信号です。
  • 消防。 煙の中で使えるのはサーモグラフィーだけで、だから現代の消防隊は必ず持っています。

できないこと四つ

壁の向こうを見る。 見えているのは壁の表面です。裏の温かい配管は、その上の壁を時間をかけて温めるから浮かび上がるだけで、ぼやけて、遅れて、弱くしか出ません。

ガラス越しに見る。 この波長でガラスは不透明で、鏡のように振る舞います。窓に向ければ自分が写ります。

光沢面を測る。 磨いた金属は赤外線を反射するので、映り込んでいるものの温度を示します。だから現場では、そこにつや消しのテープを貼ってその上を測ります。

外付けなしでスマホで動かす。 スマホにマイクロボロメーターはないので、どんなアプリにもできません。詳しくはスマホのサーモグラフィーアプリに書きました。

ではサーモグラフィーアプリとは

鎖の最後の一手だけを、最初の三手なしでやっているものです。本物の機器は温度を測り、その数値を疑似カラーで塗ります。アプリは塗るところから始めます。普通のカメラ映像の明るさを取り、同じパレット(Iron、Rainbow、Arcticなど)に通すのです。

明るさと熱がたまたま一致する場面では説得力があります。湯気の立つカップ、熱を持ったノートPCの排気口、カーテン越しの日差し。一致しない場面では、それはただの色の処理です。温度を測れると言うアプリは嘘をついています。

Thermal Cameraはその正直な版です。20のルックを端末内でリアルタイムに描画し、画面内の最も明るい点と暗い点を示すHUDを備え、温度の数値はどこにも出しません。あなたのiPhoneがそれを出せないからです。

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